採用(入口)の次に来るのが定着(入社後)です。
「人が育ち、人が残る」職場づくりにおいて、近年「エンゲージメント」という言葉が注目されています。
しかし、この言葉はしばしば誤解されます。
今回は、このエンゲージメントとは具体的に何を指すのか、そしてなぜそれが採用のミスマッチを防ぎ、定着につながるのかを、解説します。
エンゲージメントを難しい言葉で定義する必要はありません。
私たちは、これを「企業と社員の、相思相愛の度合い」、あるいは「社員が会社に対して感じている、合理的な信頼」と解釈しています。
この合理的な信頼は、2つの要素で成り立っていると考えられます。
1. 信頼(公平性):会社は、自分のことを公平に扱い、見てくれている。
2. 意欲(合理性): この会社は、自分が能力を発揮する価値がある、と感じていること。
この公平性と合理性が両方とも高い状態が、エンゲージメントが高い状態です。
給与(条件)が良いからという理由だけで残っているぶら下がりの状態や、仕事は楽しいが、会社(評価)は信頼できないという状態は、エンゲージメントが高いとは言えません。
最も多い誤解は、エンゲージメントを社員満足度(ES)や仲の良さと混同することです。
社員満足度:
会社が提供する環境(給与、福利厚生、設備)に対する、社員の満足度です。
満足していても、意欲があるとは限りません。
仲の良さ:
エンゲージメントの構成要素の一つですが、本質ではありません。
この誤解が、最近、社員のエンゲージメントが低いから、飲み会や社内イベント(BBQなど)を企画しようという、的を射ない対策につながります。
社員が会社に信頼を失っている(例:評価が不公平だ)場合、その不満の根本原因を解決しないままイベントを開催しても、エンゲージメントは向上しません。
むしろ、社員は「そういうことじゃない」「面倒だ」と感じ、逆効果になることさえあります。
エンゲージメントはイベントで高まるものではなく、日々の誠実な体制の運用によって育まれるものです。
「公平な」評価体制(【生成AI】AI時代の「人事評価」。効率化できること、人がすべきこと)
頑張りが報われるという客観的な評価の物差しがあること。
「信頼できる」労務管理(【生成AI】「給与計算」は、AIでどこまで自動化できるのか? )
給与計算が正確である、勤怠管理が公平である、という最低限の信頼の土台があること。
「安心できる」育成体制(【育成】「OJT」という名の「放置」になっていませんか?)
新入社員を放置せず、会社全体で育てるという体制があること。
「誠実な」対話(1on1)
上司が部下のキャリアや不安について、定期的に対話する場を持っていること。
エンゲージメントとは、飲み会という非日常で作るものではありません。
「評価」「労務」「育成」「対話」といった、日々の誠実な当たり前の運用の結果として、自然と高まっていくものです。
この体制を整えることこそが、「人が育ち、人が残る」職場づくりの本質だと考えます。