求人票を作成する際、私たちが今すぐ削除(修正)すべきNGワードとして、真っ先に指摘させていただく言葉があります。
その代表格が、「アットホームな職場です」という一言です。
私たちがこの言葉をNGワードと断言するのには、明確な理由があります。
それは、企業側のポジティブな意図とは裏腹に、この言葉が採用のミスマッチを深刻化させ、採用の機会損失を生んでいると確信しているからです。
企業側は「社員同士の仲が良い」「風通しが良い」といったポジティブな意図で使っています。
しかし、求職者は、この言葉をどう受け取るでしょうか。
「プライベート(休日や終業後)の付き合いを強制されそう」
「公私の区別が曖昧で、評価制度も、労務管理も、なあなあになっていそう」
「アットホーム=家族(経営者)への奉仕を求められそう」
このように、「アットホーム」という言葉は、求職者によって解釈が180度変わってしまう、非常に曖昧で危険な言葉です。
近年、アットホームという言葉は、求職者の間で他にアピールできる強みがない会社の常套句、あるいはブラックな環境をごまかす言葉ではないか、とまで認識されつつあります。
結果として、貴社が本当に求めているはずの、情報感度が高く、論理的に物事を判断する優秀な人材ほど、この言葉を見た瞬間に警戒し、応募を避けてしまう機会損失が起きているのです。
求人票は、企業が使える文字数が限られています。
その貴重なスペース、一言一句を無駄にできない中で、深刻な誤解を生むNGワードに文字数を割いてしまうのは、採用戦略上、あまりにももったいないと言わざるを得ません。
私たちの使命は「人が育ち、人が残る」ことです。
そのためには、採用の入口(求人票)での曖昧さを徹底的に排除し、解釈のズレを防ぐ仕組みが必要です。
私たちは、そのアットホームという抽象的な想いを、求職者に誤解なく伝わる具体的な事実に翻訳する作業が重要だと考えます。
もし、貴社のアットホームが、「社員同士の仲が良い」ことを意味するならば、
【翻訳(事実)】
「2ヶ月に1回、会社負担での懇親会(参加は任意)を開催しています」
「チャットツールでは、業務連絡以外に『雑談チャンネル』があり、活発に意見交換しています」
と書きます。
もし、貴社のアットホームが、風通しが良いことを意味するならば、
【翻訳(事実)】
「月1回の『1on1ミーティング』(【育成】「OJT」という名の「放置」になっていませんか?)で、必ず上司と1対1で話す時間を確保しています」
「新入社員(【定着】「人が辞めない会社」が最初に取り組むこと)であっても、業務改善の提案を歓迎する『目安箱』制度があります」
と書きます。
アットホーム以外にも、
「やりがいがあります」
「成長できる環境です」
「和気あいあい」
といった言葉は、すべて同じ危険性をはらんでいます。
これらの便利(とされる)言葉に頼るのではなく、 必ず「そのやりがいとは、具体的に何ですか?」「どう成長できるのですか?」と、企業の核を掘り下げて言語化する必要があります。
曖昧な言葉を排除し、具体的な事実だけを誠実に伝えること。
それこそが、貴社に本当に合う人材(=定着する人材)と出会うための、唯一の仕組みなのだと考えます。