面接において、前職の退職理由は、応募者の価値観やストレス要因を知る上で非常に重要な質問です。
しかし、多くの応募者は「キャリアアップのため」「新しい環境で挑戦したかった」といった、当たり障りのない建前の回答を用意しています。
この建前を鵜呑みにして採用すると、入社後に同じ理由で辞めてしまうという早期離職につながる可能性があります。
応募者の本音を引き出し、ミスマッチを防ぐための、私たちが推奨する具体的な質問の技術を解説します。
応募者は、面接を自分を良く見せる場(テスト)と認識しているため、ネガティブな退職理由(例:「上司と合わなかった」「残業が多すぎた」「評価が不公平だった」)を正直に話すことは稀です。
しかし、企業側が知りたいのは、まさにそのネガティブな本音です。
もし応募者が前職の評価の不公平さで辞めたにも関わらず、自社の評価制度も曖昧なままであれば、その応募者は高い確率で再び同じ不満を抱き、離職してしまいます。
多くの面接官は、履歴書の時系列に沿って「A社を辞めて、B社に入社したのはなぜですか?」という聞き方をします。
しかし、これではA社を辞めた理由とB社に入った理由が地続きになるため、応募者は(建前の)一貫したストーリーを話しやすくなります。
推奨される質問術は、退職理由と入社理由を分離して聞くことです。
【「時系列をずらす」質問ステップ】
ステップ①:「退職理由」だけを先にすべて聞く
「まず、A社を辞められた理由は何ですか?」
(回答を聞く)
「次に、B社を辞められた理由は何ですか?」
ステップ②:次に、「入社理由」だけを連続して聞く
「ありがとうございます。では、A社を辞められた後、B社に入社されたのはなぜですか?」
ステップ③:「矛盾」や「違和感」を深掘りする
この質問法を使うと、退職と入社の間に時間的な間隔が空くため、応募者の本音や矛盾が表れやすくなります。
(例:矛盾の発見)
(退職理由):「A社は“事務作業”ばかりだったので、もっと“営業”がしたくて辞めました」
(入社理由):「B社は“総務職”として、安定して働けると思ったからです」
この場合、営業がしたいという退職理由と、総務職という入社理由に矛盾が生じています。
これは、その場しのぎの転職(=逃げの転職)を繰り返している可能性を示唆しています。
この矛盾が見えた際、応募者を責めるような聞き方(圧迫面接)をしてはいけません。
あくまでファン化面接(【採用】「良い人」ではなく「合う人」を見極める。『ファン化面接』とは? )を意識し、
「なるほど、A社では営業がしたいとお考えだったのですね。B社では総務職を選ばれていますが、その間で何か心境の変化があったのですか?」
と、応募者の価値観を理解しようとする姿勢で、丁寧に事実を確認することが重要です。
本音を引き出す質問術は、応募者を見極めるためだけでなく、自社と合う人材かをお互いに確認し、入社後のミスマッチを防ぐための誠実な技術です。