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面接で、とても感じの良い「良い人」だと思って採用したのに、入社したら、どうも社風に合わなかった。
これは、私たちがご支援する中で最も多く耳にする採用のミスマッチの典型的なパターンです。
なぜ、これが起こるのでしょうか。
それは、面接の仕組みが、感覚や印象に頼ってしまっているからです。
面接官が良い人と感じる基準は、(【採用】「求める人物像」が曖昧だと、採用は必ず失敗します)でお話しした通り、曖昧でバラバラです。
私たちが推奨する面接の仕組みとは、良い人を探すことではなく、貴社に合う人を見極めることです。
そして、それと同時に、応募者に、貴社のファンになってもらうことです。
私たちは、この仕組みをファン化面接と呼んでいます。
私たちは、採用活動をマーケティングの「4P」で分析します。
「Price(給与)」や「Product(仕事内容)」は、大企業に比べて不利なことが多いかもしれません。
しかし、中小企業には、「Place(選考プロセス)」、すなわち面接での体験で、大企業に逆転勝利できる、大きなチャンスが残されています。
ファン化面接とは、企業が応募者を一方的にジャッジするだけの場ではありません。
企業もまた、応募者から選別されているという意識を持ち、応募者の入社意欲を最大限に高める魅力づけを行う仕組みです。
「魅力づけ」とは、企業が良いことだけを言って取り繕うことではありません。
私たちが企業ごとにカスタマイズしてご支援する仕組みとは、面接の流れそのものであり、誠実な事実に基づいています。
私たちが推奨する流れ(仕組み)の一例を、なぜ、それを行うのか(意図)と共に、解説します。
なぜやるか(意図):
面接は異常な空間です。
応募者の緊張(不安)を解き、心理的安全性を確保することで、本音(素)で話してもらう信頼の土台を作ります。
具体例:
面接官は遅刻せず、応募者を「〇〇様」とお呼びし、感謝を伝えます。
「今日は暑いですね」といった声がけも大切です。
「〇〇様の履歴書、事前に拝見しました。〇〇のご経験、素晴らしいですね」と承認から入ります。
なぜやるか(意図):
これから何が始まるのかという見通しを立ててもらい、不安を取り除き、対等な対話の場であることを宣言します。
具体例:
「本日は約60分です。私たちの面接は、私たちも自己開示をし、お互いの価値観がマッチするかを相互に見極める場にしたいと考えています」
なぜやるか(意図):
応募者には全てを開示させる以上、企業(面接官)が先に自己開示するのが誠実な対応です。
応募者が本音で語る(ステップ7)ための呼び水とします。
具体例:
「私は人事課長の鈴木です。入社7年目で、前職は〇〇でした。今はウチの『〇〇』という理念に共感してくれる仲間を探す仕事をしています」
(ポイント)面接官が熱く、エネルギッシュに語ることが、応募者の本気を引き出します。
なぜやるか(意図):
従来の面接と流れが真逆です。
私たちは、応募者に質問する前に、企業が先に自己開示することで、入社後の「こんなはずじゃなかった」という最悪のミスマッチを予防します。
具体例:
「私たちの強みは〇〇です。しかし、正直に申し上げて課題(弱み)もあります。それは、社内のIT化が遅れていることです。だから今、〇〇様のような『業務改善のIT化のご経験』がどうしても必要なのです」
得られる「仕組み」としての効果:
「強み」+「誠実な弱み(課題)」+「だから、あなたが必要だ」をセットで伝える。
これこそが、信頼できる口説き文句であり、最強のミスマッチ防止の仕組みです。
なぜやるか(意図):
一方的な説明で終わらせず、応募者の理解度と質問力を確認します。
具体例:
「今のお話について、何か聞きたいことや、分かりにくかった点はありますか?」
なぜやるか(意図):
開示した課題に対し、応募者が自分事として、どう貢献できるか(合う人か)を説明してもらいます。
具体例:
「先ほどの課題(アナログな業務)について、〇〇様のご経験(行動事実)を、どう活かせるとお考えですか?」
なぜやるか(意図):
定着のため最も重要です。
企業の理念(ステップ4)と、応募者のビジョン(本音)が、同じ方向を向いているかを徹底的に深掘りします。
具体例:
「〇〇様が、仕事を通じて『将来どうなりたいか』というビジョンをぜひ教えてください。(抽象的なら)『具体的には』どういうことでしょうか?」
なぜやるか(意図):
ビジョン(未来)だけでなく、客観的な事実(過去)(例:ブランク、転職回数)も確認し、企業側の懸念を解消します。
具体例:
温和に(圧迫せず)、「差し支えなければ『直近の』転職の経緯だけ教えていただけますか?」
なぜやるか(意図):
合格と判断した応募者へのクロージング(口説き)です。
ピークエンドの法則を活用し、最高の体験で面接を締めくくります。
具体例:
「〇〇様のビジョン(ステップ7)と、私たちの理念(ステップ4)は、完全に一致していると確信しました。ぜひ一緒に、その目標に向かって頑張りましょう!」
(ポイント) 面接官が熱く語り断定する形で口説くことが、ファン化の決定打となります。
私たちも、この全9ステップを、企業がいきなり完璧に実践するのは難しいことを承知しています。
もし、これら全てが難しい場合でも、最低限これだけは、とお伝えしている仕組みがあります。
最初に面接官がエネルギッシュに自己紹介と会社説明(課題も含む)を行うこと
見極める質問は、「具体的には?」「他には?」と広く・深く確認すること
面接の最後は、合否に関わらず、必ず感謝で締めること
面接は、企業が人を大切にする仕組みを、応募者にプレゼンテーションする唯一の場です。
私たちは、この流れ(仕組み)の設計と面接官トレーニングを、企業ごとにカスタマイズして並走支援しています。