(【採用】面接辞退(ドタキャン)を防ぐ、「面接案内状」と「リマインド」の技術)では、面接辞退(ドタキャン)を防ぐ仕組みについて解説しました。
しかし、応募者が無事に面接会場に到着しても、そこで不誠実な対応をしてしまえば、それまでの努力は水の泡となります。
特に中小企業において、「面接は応募者を見極める(選別する)場」という意識が強く、応募者へのおもてなし(ホスピタリティ)という視点が欠けているケースが散見されます。
なぜ、面接当日のおもてなしが採用活動において重要なのか、その理由と具体的な手法を解説します。
面接は、応募者にとって異常な空間です。
緊張で本来の自分を出せないまま面接が終了すれば、企業側は良い人か悪い人かという印象でしか判断できず、ミスマッチ(早期離職)の原因となります。
おもてなしによって緊張をほぐし、リラックスしてもらうことは、応募者の「素」を引き出し、結果として自社に“合う”人かを見極めるために不可欠です。
人手不足の現代において、面接は「企業が応募者を選ぶ」場であると同時に、「応募者が企業を選ぶ」場でもあります。
応募者は必ずライバル企業と比較しています。
給与や休日で劣っていたとしても、面接当日の誠実な対応や歓迎ムードが、応募者の心を動かし、「この会社いいな!」と思わせる決め手となり得ます。
たとえ不採用にした応募者であっても、雑な対応をしてはいけません。
不採用者がSNSなどに悪い口コミを書けば、それが企業の評判を下げ、未来の応募者を遠ざけるリスクがあるからです。
不採用者にすら「良い会社だった」という印象を持ってもらう危機管理の観点からも、おもてなしは重要です。
応募者が面接開始時刻の5分前になっても到着しない場合、すぐに電話をかけましょう。
応募者は初めての場所で道に迷っている可能性があります。(※遅刻が確定した後に電話をすると、応募者は怒られるのが嫌で電話に出ず、そのまま辞退(ドタキャン)につながるリスクがあります )
入口が分かりにくいビルなどの場合、「面接会場はこちら」といった案内板を設置します。
また、会場の入口に「〇〇様、本日はようこそ」といったウェルカムボードを設置するのも、歓迎の意が伝わり非常に効果的です。
面接に来た応募者を、既存の社員がジロジロと無言で見ている、という光景は最悪です。
「今日は〇時から〇〇さんが面接に来るので、全員で明るく挨拶しましょう」と事前に社内で共有し、会社全体の「歓迎ムード」を演出することが重要です。
応募者を案内した部屋が暗い、暑い(寒い)というのは、基本的なマナー違反です。
お客様(応募者)を迎える準備として、事前に照明や空調を整えておくのは社会人としての常識です。
暑い日や寒い日に訪問してくれた応募者へのお茶出しは必須です。
可能であれば、自動車ディーラーのように「お飲み物メニュー」(コーヒー、お茶、水など)を用意して選んでもらうと、よりおもてなしの姿勢が伝わります。
他社がやっていない、こうした小さな一手間が、応募者の心を掴みます。
やむを得ず応募者を待たせる場合は、手持無沙汰にさせてはいけません。
会社のパンフレットや、求人票には書ききれなかった社内の様子が分かる資料、あるいは社長のメッセージ動画などをタブレットで用意しておくことで、待ち時間を企業理解の時間に変えることができます 。
面接当日のおもてなしは、コスト(費用)ではなく、採用における投資だと考えます。
応募者をお客様として誠実に対応する仕組みづくりこそが、「人が育ち、人が残る」体制の基盤となります。