(【採用】「良い人」ではなく「合う人」を見極める。『ファン化面接』とは? )で解説した通り、「(スキルだけの)良い人」ではなく、「(価値観が)合う人」を採用することが、定着の鍵です。
しかし、多くの面接官が、この価値観を見極めようとするあまり、
「(NG質問)あなたの価値観は何ですか?」
「(NG質問)仕事において大切にしていることは何ですか?」
という、漠然とした質問をしてしまいがちです。
なぜ、この質問が、ミスマッチを防ぐ上で悪手となるのでしょうか。
それは、応募者が準備したキレイごとの建前(最近ではAIで準備している可能性もあります)しか引き出せないからです。
価値観は、一方的な質問で見抜くものではなく、双方向の対話(すり合わせ)で確認するものだと考えます。
ミスマッチを防ぐための、具体的な対話の技術を解説します。
面接官が「あなたの価値観は?」と質問した瞬間、応募者は「テストが始まった」と身構えます。
そして、求めているであろう模範解答を無意識に、あるいは戦略的に探し始めます。
(例)応募者の思考:
「(ベンチャー企業だから)挑戦や成長と答えるべきだろう」
「(老舗企業だから)誠実や協調性と答えるべきだろう」
これでは、応募者の素の価値観は永久に見えません。
特に、生成AIが普及した現代において、応募者は貴社のホームページや理念をAIに読み込ませ、貴社が最も評価する価値観の模範解答を完璧に準備して面接に臨んでいます。
「価値観は?」という質問は、応募者の素ではなく、AIや建前の質をテストしているに過ぎないのです。
では、どうすれば素の価値観を引き出せるのでしょうか。
答えはシンプルで、応募者に質問する前に、会社側が自己開示することです。
これが、「ファン化面接(【採用】「良い人」ではなく「合う人」を見極める。『ファン化面接』とは? )」の核となる対話の技術です。
(NGな質問)
面接官:「あなたの価値観は?」
応募者:「挑戦です(建前)」
(OKな対話:自己開示が先)
1.(会社が)自己開示する:
面接官:「まず、私たちの話をします。実は、私たちの会社は、挑戦よりも誠実さ(確実性)を何よりも大切にしている会社です。だから、失敗しないための準備(プロセス)を、非常に重視します」
2.(その上で)すり合わせる:
面接官:「…という私たちの価値観を聞いて、〇〇さん(応募者)は、ご自身の価値観と合うと感じますか?それとも正直合わないと感じますか?」
この会社からの自己開示というステップを踏むことで、応募者との関係性がテスト(評価)から対話(すり合わせ)へと変化します。
メリット①:「素が出やすくなる」
「会社が本音(=ウチは挑戦より誠実さ)を先に見せてくれた」ことで、応募者も「自分も本音を話そう」という安心感が生まれます。
(例:「(本音)実は私も、挑戦ばかり求められるより、確実な準備を重視する方が合っています」)
メリット②:「合わない人を円満に見極められる」
もし応募者が挑戦を最優先する価値観だった場合、応募者自身が「この会社は合わないな」と自主的に気づいてくれます。
(=「(スキルは高いが)価値観が合わない人」の採用(【採用】「良い人」ではなく「合う人」を見極める。『ファン化面接』とは? )の悲劇を、未然に防げる)
価値観とは、どちらが良い・悪いではなく、貴社と合う・合わないという相性の問題です。
面接を建前を見抜く場から、本音をすり合わせる場へと仕組み化すること。
それこそが、「人を迎え、人が育ち、人が残る」職場環境の基盤となると考えます。