ChatGPTなどの生成AIは、正しく使えば採用活動の強力なアシスタントとなります。
しかし、多くの企業がAIの活用法を誤解したまま導入し、かえって採用のミスマッチを深刻化させているケースが見受けられます。
今回は、面接質問にAIを活用する際の危険な使い方と、ミスマッチを防ぐための戦略的な使い方を網羅的に解説します。
例えば、AIにこう依頼したとします。
「IT企業で営業職を採用します。面接の質問を10個考えてください」
AIは、即座に「それらしい」質問を提示するでしょう。
あなたの長所と短所を教えてください。
なぜ、当社を志望されたのですか?
学生時代に力を入れたことは何ですか?
困難を乗り越えた経験を教えてください。
…いかがでしょうか。 これらはすべて、「どこかで見たことがある質問」です。
このアプローチには、2つの重大な欠陥があります。
1. 「合う人」を見極められない
これらの質問は、貴社が本当に採用したい人を見極めるための問いになっていません。
「良い人」という曖昧な印象しか得られず、入社後のミスマッチにつながります。
2. 応募者も「AI」を使っている
求職者は、これらの一般的な質問が来ることを知っています。
そして、彼ら(彼女ら)もまた、生成AIを使って模範解答を準備しています。
極端にいうと、AIが作った「長所は?」という質問に、AIが作った「協調性です」という答えが返ってくる。
これでは、面接官は応募者の本質や、貴社の文化に本当にフィットするかどうかは、全く見えません。
人材で困らない企業になるためのAIの活用法は、AIに戦略を与え、優秀な質問作成アシスタントとして機能させることです。
【ステップ1:戦略(人間)】
まず、本当に採用したい人物像(採用ペルソナ(【採用】「求める人物像」が曖昧だと、採用は必ず失敗します))を明確にします。
(例:「新規開拓で数字を追うタイプ」ではなく、「既存顧客とじっくり関係を築き、サポートも厭わない『農耕型』の人」)
【ステップ2:戦略的アシスト(AI)】
次に、このペルソナを見極めるための質問を作成するよう、AIに具体的に依頼します。
(依頼プロンプト例)
「あなたはプロの採用面接官です。 当社の採用ペルソナは『既存顧客とじっくり関係を築く農耕型の人』です。 このペルソナに合致するかどうかを見極めるため、ありきたりの質問(長所短所など)は除外し、候補者の過去の『具体的な行動』を聞き出すための『行動面接(BEI)』の質問を10個、作成してください。特に、『顧客との関係構築』と『サポート業務への姿勢』がわかる質問をお願いします」
【ステップ3:戦略的な「たたき台」(AI)】
この指示(プロンプト)によって、AIが生成するたたき台は、劇的に変わります。
(NG):「長所は?」
(OK):「お客様と長期的な信頼関係を築く上で、あなたが最も重要だと思う『行動』は何ですか? 最近それを実践した具体的なエピソードを教えてください」
(NG):「困難を乗り越えた経験は?」
(OK):「営業活動において、『売上目標』と『顧客の真の利益』が相反するように感じた経験はありますか? その時どう考え、どう行動しましたか?」
【ステップ4:仕上げ(人間)】
AIが作ったこのたたき台を、私たち人間がさらに磨き上げます。
そして、面接の場で最も重要な「なぜ、その質問をするのか?(=ペルソナの何を確認したいのか)」という評価基準(面接のルール)を、面接官(経営層・現場担当者)と事前にすり合わせます。
AIは、私たちの戦略をインプットすることで、初めて優秀なアシスタントとして機能します。
極端な例ではありましたが、AIに「長所は?」と聞かせ、AIに「協調性です」と答えさせる不毛なやり取りをなくすこと。
それこそが、採用の入口でのミスマッチを防ぎ、「人が育ち、人が残る」という未来への、重要な面接の進め方なのだと考えます。