「やっと人が採れて、定着もしてきた。これでしばらくは採用活動をしなくて済むぞ」
「いつになったら、人の悩みから解放されるんだろう」
経営者の皆様は、常にゴールのないマラソンを走っているような疲労感をお持ちかもしれません。
しかし、残酷な事実をお伝えしなければなりません。
会社を存続させる限り、採用と定着の活動に終わりはありません。
なぜなら、組織は生き物だからです。
生き物が呼吸し続け、食事し続けなければ死んでしまうように、組織も新しい人(酸素)を入れ、育て続けなければ、やがて老衰して死にます。
本記事では、一時の売上ではなく、100年先まで生き残る老舗企業が共通して持っている永続の仕組みについて解説します。
創業100年を超えるような老舗メーカーや工務店には、ある共通の鉄則があります。
それは、どんなに不況でも、どんなに人が足りていても、定期的に新人を採用し続けるということです。
なぜでしょうか?
それは、技術と文化のバトンリレーを途切れさせないためです。
例えば、今は人が足りているからといって5年間採用を止めたとします。
すると社内には、20代後半から30代前半の社員がいない空白の5年間(年齢の断層)が生まれます。
この断層は、10年後、20年後に致命傷となります。
ベテランがいざ引退しようとした時、脂の乗った中堅がおらず、経験の浅い若手しかいない。
これでは技術を教えることも、管理職を任せることもできません。
黒字なのに後継者や幹部候補がいなくて廃業する会社の多くは、過去にこの採用の停止ボタンを押してしまったことが原因です。
採用とは、今日の人手不足を埋めるためではなく、10年後の組織図に穴を空けないために行うものです。
老舗の鰻屋さんの秘伝のタレを想像してみてください。
あれは創業時のタレがそのまま残っているわけではありません。
毎日、新しいタレを継ぎ足し、古いタレと混ざり合うことで、味に深みが出ているのです。
もし継ぎ足しを止めたら、タレは蒸発して煮詰まるか、腐ってしまいます。
組織もこれと同じです。
現状維持(同じメンバーだけで固まる)は、組織が腐る始まりです。
新しい若者が入ってきて、無邪気な質問をする。
「社長、なんでこの作業が必要なんですか?」
「先輩、このやり方は古くないですか?」
この異物としての問いかけが、組織の硬直化を防ぎ、時代に合わせた変化を促します。
ずっと同じメンバーだけで固まっていると、阿吽の呼吸で仕事は早いですが、外の世界の変化に気づけなくなります。
変わらない味(社風)を守るために、新しい水(人)を入れ続ける。
これが長寿企業のパラドックス(逆説)であり、真理です。
採用と定着をプロジェクト(期間限定の工事)だと思っていると疲れます。
ビル工事には完成(終わり)がありますが、組織作りには完成がありません。
経営者の仕事は、工事現場の監督ではなく、庭師に近いものです。
毎日水をやる(声かけ・承認)。
雑草を抜く(不満の解消)。
新しい種を植える(採用)。
日当たりを調整する(配置転換)。
今日は綺麗に整っても、明日にはまた雑草が生えます。
台風で枝が折れることもあります。
それを面倒だと思わず、**「手入れし続けること自体が経営なのだ」**と腹を括れるかどうか。 100年続く美しい庭(会社)は、派手な大改造ではなく、毎日の地味な手入れの積み重ねで作られているのです。
採用と定着は、今月の売上を作るための活動ではありません。
「未来の会社」を創るための投資です。
今日採用した新人が、10年後の部長になり、20年後の社長を支えます。
そのバトンを途切れさせないこと。
それが、創業者が果たすべき最大の責任なのだと考えます。