「うちは小さい会社だから、用意できるポスト(役職)なんてないよ」
「部長や課長といっても、名ばかりになってしまう」
キャリアパスの構築をお勧めすると、謙遜される経営者様が多くいらっしゃいます。
確かに、大企業のような「課長→部長→本部長」といった立派な出世階段を作ることは難しいかもしれません。
しかし、社員が求めているキャリアパスとは、必ずしも肩書きだけではありません。
彼らが真に求めているのは、「ここで働き続けた先に、自分はどう成長できるのか(どんなプロになれるのか)」という、自身の未来図です。
優秀な社員ほど、自分の市場価値に敏感です。
「今の仕事をあと3年続けて、自分は何を得られるのだろう?」
その問いに対する答えが会社から提示されない時、彼らは外の世界(転職市場)に答えを求め始めます。
これは、給与の不満以上に深刻な定着の阻害要因となります。
会社が小さくても、「この会社にいれば、こういうスキルが身につき、こういう人材になれる」という成長の地図を示すことは可能ですし、経営者の責務でもあります。
ポストに限りがある中小企業にお勧めしているのが、「等級制度(役割等級)」の導入です。
人を管理することだけを上位職にするのではなく、提供できる価値によってランクを定義します。
初級(見習い): 指示通りに業務を完遂できる。
中級(一人前): 自分の判断で業務を回し、後輩の指導ができる。
上級(熟練・監督): 部門の目標達成に責任を持ち、仕組みを改善できる。
このように、何ができるようになれば、次のステップに行けるのかを言語化するだけで、それは立派なキャリアパスになります。
「管理職コース」だけでなく、現場を極める「専門職(スペシャリスト)コース」を用意するのも、多様な人材を定着させる有効な手段です。
制度を作ったら、ぜひ定期的な面談(1on1)で語り合ってください。
「君には将来、こういう役割を担ってほしい」という会社の期待と、「自分は将来、こうなりたい」という本人の希望。
この二つが重なる部分を見つける作業こそが、キャリア支援の本質です。
「うちにはポストがない」と諦める前に、まずは社員一人ひとりの「3年後の姿」を、一緒に想像することから始めてみませんか?