「うちはパートさんが多いけど、正社員とは区別しているから大丈夫だよね?」
経営者の方から、よくこんな質問をいただきます。
いわゆる「同一労働同一賃金」の話です。
大企業だけでなく、中小企業でもすでに全面適用されていますが、現場では「何から手を付ければいいのかわからない」という声が依然として多いのが実情です。
この法律、名前だけ聞くと「全員同じ給料にしなきゃいけないの?」と勘違いされがちですが、実はそうではありません。
今回は、難しい法律用語は抜きにして、「中小企業経営者がこれだけはやっておくべき実務の急所」をお話しします。
まず、最大の誤解を解いておきましょう。
この制度は、「正社員とパート社員の給料を同額にしなさい」という法律ではありません。
求められているのは、「不合理な待遇差の解消」です。
つまり、給料に差があること自体はOKです。
ただし、「なぜ、その差があるのか?」を合理的に説明できなければなりません。
「正社員だから高い、パートだから低い」 これだけの理由では、もう通用しない時代になったのです。
では、どこから手をつけるべきか。
基本給の改定はいきなりハードルが高いと思います。
まず最初に見直すべきは、「諸手当」です。
例えば、こんな状況になっていませんか?
正社員には「通勤手当」が全額出るが、パートには出ない
正社員には「皆勤手当」があるが、パートにはない
正社員は「慶弔休暇」が使えるが、パートは使えない
ここが一番の落とし穴です。
通勤にかかる費用や、休まず出勤することへの評価に、正社員もパートも関係ありませんよね?
職務の内容と直接関係のない手当で差をつけると、「不合理な差」として違法と判断される可能性が極めて高くなります。
まずは自社の賃金規定を開いて、「手当の有無」をチェックすることから始めましょう。
この法律対応のゴールは、説明責任を果たせる状態にすることです。
もし、パート社員の方から、「なぜ、私には賞与がないんですか?」 と聞かれたとき、社長は自信を持って答えられますか?
「正社員は転勤のリスクがあるから」
「緊急時の残業対応や、目標達成の責任範囲が違うから」
このように、役割や責任の違いを具体的な言葉で説明できるなら大丈夫です。
逆に、「うーん、昔からそうだから…」「パートだから…」と言葉に詰まるようなら、黄色信号です。
それは、会社側が説明できない差(=不合理な差)を放置している証拠だからです。
同一労働同一賃金への対応は、単なる法律の話ではありません。
「働く仲間に対して、誠実に向き合っているか」が問われています。
説明できない待遇差をなくし、納得感を持って働ける環境を作ること。
それが結果として、「人が辞めない強い組織」を作ることにつながると考えます。