2019年4月、働き方改革関連法により「年5日の有給休暇取得」が企業に義務付けられました。
あれから数年が経ちますが、御社の現場ではどのように運用されていますか?
「法律だから仕方なく休ませている」
「忙しいのに休みを取られると、正直現場が回らない」
もし経営者や管理職がこのようなやらされ感を持っているとしたら、それは非常にもったいないことです。
有給休暇は、単なる労働者の権利ではなく、生産性と定着率を上げるための経営戦略として活用できるからです。
今回は、有給休暇をコストから投資に変えるための、マインドセットと仕組みについて解説します。
日本の中小企業には、根強い「休むことへの罪悪感」が存在します。
有給届を出す際に、「来週、旅行に行くので…すみません」と謝る社員がいませんか?
そして上司も、「忙しい時期だけど、まあ法律だからな」と嫌味交じりに許可していませんか?
このやり取りこそが、社員のエンゲージメントを削ぎ落とす最大の原因です。
「休むこと=悪いこと(みんなに迷惑をかけること)」という空気がある職場では、社員は疲弊し、メンタル不調や離職につながります。
経営者がまずやるべきは、休養は、明日いい仕事をするための「仕入れ」であると定義し直すことです。
「しっかり休んでリフレッシュしてこい。土産話を楽しみにしているぞ」
そう送り出すだけで、社員は「この会社で長く働きたい」と感じるようになるはずです。
「休んでいいよ」と言っても、真面目な社員ほど周囲に気を使って休めないものです。
そこで有効なのが、有給休暇の計画的付与制度です。
これは、労使協定を結ぶことで、会社全体やチームごと、あるいは個人ごとにあらかじめ有給取得日を指定してしまう制度です。
飛び石連休の埋め合わせ: 火曜日が祝日の場合、月曜日を有給にして4連休にする。
バースデー休暇・記念日休暇: 個人の記念日を強制的に休みに設定する。
夏季・冬季休暇への上乗せ: お盆や正月の休みを有給で延長する。
会社主導で「ここは休み!」と決めてしまえば、社員は「自分のわがままで休む」という罪悪感を感じずに済みます。
義務化された5日分のうち、数日をこの制度で消化させることは、労務管理的にも非常に合理的です。
「あいつに休まれると仕事が止まるから困る」
これは、その社員が優秀なのではなく、組織として脆弱である証拠です(属人化)。
有給休暇は、業務の棚卸しのチャンスでもあります。
特定の人しかできない仕事をあぶり出し、マニュアル化したり、サブ担当を育成したりする。
誰かが休んでも回る仕組みを作ることは、急な病欠や退職リスクへの備え(BCP対策)そのものです。
最後に一番重要なポイントです。
社長や上司が、率先して休んでください。
ボスが年中無休で働いている職場で、部下が心置きなく有給を取れるはずがありません。
「俺が休んでいる間、よろしく頼む」
と任せることは、部下の育成にもなります。
有給取得率が高い会社は、単に楽な会社ではありません。
互いに助け合い、短時間で成果を出す文化がある会社なのだと考えます。