新入社員が、入社して最初に感じる強烈な孤独。
それは、業務中に分からないことがある時よりも、むしろお昼休みに訪れます。
「お昼、どうしよう…」
「みんな、それぞれのグループで食べているし、話しかけづらいな」
「自分の席で一人で食べていいのかな、それとも外に出た方がいいのかな」
このランチ難民になってしまった瞬間、新人は
「自分はこの組織の一員として受け入れられていないのではないか」
という疎外感を抱きます。
たかがランチ、ではありません。
この積み重ねが、ボディブローのように効き、早期離職の引き金になります。
私たちは、この休憩時間や雑談といった非公式なコミュニケーションこそ、企業が主導して仕組みにすべきだと考えています。
多くの企業が、「社員同士のコミュニケーションは、自然に任せればいい」と考えています。
しかし、既存社員は既存のコミュニティが出来上がっており、そこに新人が自然に入っていくのは、心理的に非常にハードルが高いものです。
私たちが推奨する仕組みは、以下の通りです。
入社初日から1週間は、誰と食べるかを会社が指定します。
これを個人の自由にしてはいけません。
初日: 社長や役員、直属の上司と。
2日目: 所属部署のメンバーと。
3日目: メンターや、他部署の若手と。
ポイントは、会社がスケジュールを組み、店を予約し、費用を負担することです。
「歓迎されている」という事実を、食事という体験を通じて伝えます。
部署の壁を越えた関係性を作るため、月に1回程度、くじ引きなどでメンバーを決めてランチに行く仕組みを作ります。
ここでも、ランチ代補助(1人1,000円など)を出すことで、業務の一環としての交流であることを明確にします。
仕事中の私語は慎むべきという空気がある職場ほど、新人は息が詰まります。
雑談は、サボりではなく、心理的安全性を高めるための重要な業務です。
朝礼後の「1分間スピーチ」や「Good & New(良かったことの共有)」
チャットツールの「雑談チャンネル(分報)」
夕方の「お菓子タイム(リフレッシュ)」
これらを制度(ルール)として導入することで、「話してもいいんだ」という安心感を作ります。
定着する組織とは、業務の話しかしない組織ではなく、どうでもいい話(雑談)ができる組織です。
なぜなら、人は機能(仕事)だけでつながるのではなく、感情でつながった場所にこそ、居場所を感じるからです。
ランチや雑談を、個人の裁量に任せず、企業が仕組みを用意してデザインすること。
それが、新入社員を孤独から救い、「人を迎え、人が育ち、人が残る」ための、非常に費用対効果の高い投資になると考えます。