内定を出した後、応募者が現職(前職)の上司に退職を申し出た結果、強い引き止め(慰留)にあい、内定辞退に至るケースは後を絶ちません。
これは、人手不足の現代において、採用企業側が必ず想定すべき最大の関門の一つです。
内定を出したから安心ではなく、内定はスタートラインと捉え、応募者がスムーズに退職交渉を終えられるようフォローする仕組みこそが、採用の最後の決め手となります。
ここでは、内定辞退を防ぐための退職フォローの具体的な手法を解説します。
人手不足の今、どの企業も一人の社員に辞められるのは大きな痛手です。
そのため、退職を申し出た社員(応募者)に対し、上司は必ず引き止めを行います。
たとえ応募者が貴社への転職を決意していても、現職の上司から「君がいないと困る」「給与を上げるから残ってくれ」といった情に訴えられると、心が揺らぎます 。
特に転職経験が少ない応募者は、どうやって退職を切り出せば円満に進むかという具体的なノウハウを知りません。
その結果、交渉が難航し、疲弊してしまい、(面倒だから)転職自体を諦めるという結論に至るケースがあります 。
採用企業側が退職交渉に直接介入することはできませんが、応募者を支援することは可能です。
1. 「引き止め」の典型パターンを事前に教える
面接や内定後の面談(条件面談)の段階で、退職交渉時に必ず言われるであろう「典型的な引き止め文句」を応募者に事前に伝えておきます 。
(例:典型的な引き止めパターン)
「給与(条件)を上げるから残ってくれ」 →(フォロー例)「一度辞めると表明した社員の昇給は、一時的なものであるケースが多いです。その会社に残ったとして、将来的なキャリアは大丈夫ですか?」
「今辞められると、みんなが困る」 →(フォロー例)「それは会社(マネジメント)の問題であり、あなたが責任を感じる必要はありません。ご自身のキャリアを最優先してください」
「裏切り者だ」 →(フォロー例)「(感情論ですね)法的に退職は労働者の権利です。感情的にならず、誠実に事務手続きとして進めましょう」
このように予測される事態を事前に伝えることで、応募者は冷静に対処でき、「(採用企業の)言う通りになった。やはりこの会社は信頼できる」と、貴社への入社意思を固めます。
2. 「退職の意思表示」の仕方をアドバイスする
「退職願」と「退職届」の違いや、法律(民法上は2週間前だが、就業規則の確認も必要)に基づき、いつ、誰に、どうやって退職の意思を伝えるべきか、具体的な手順をアドバイスします。
(例:「まずは相談ではなく、『〇月〇日付で退職します』という明確な意思として、直属の上司に口頭で伝えてください」)
3. 「退職交渉中」の駆け込み寺になる
「もし、退職交渉で困ったことや、不安なことがあれば、いつでも(私に)連絡してください」
と伝え、応募者が一人で抱え込まないための窓口を作ります。
現職の上司に引き止められて心が揺らいだ時、貴社(採用担当者)が「あなたの決断は間違っていない」と背中を押してあげる第三者の視点が、応募者の不安を解消します。
人材紹介会社のエージェントは、この退職フォローを徹底的に行っています 。
なぜなら、入社して初めて売上になるからです。
自社採用を行う中小企業も、このプロのスタンスを見習うべきです。
内定者は、入社するまでは孤独です。
現職の引き留めというプレッシャーの中で戦う内定者を、一番近くで支え、導いてあげること。
それもまた、採用担当者の重要な仕事だと考えます。